来院する患者さんの訴えで一番多いです。
痛む場所は耳の前の顎関節がある場所が多いのですが、筋肉に炎症を起こすと頭痛として感じるときもあるし、首や肩が痛いと感じる場合もあります。
“口を動かすと「カクン、カクン」という音がします。”という方がいます。
この場合動かすときに痛みがあったり、音に変化が出てきたり、口の開き方やかみ合わせに変化を感じる場合は治療が必要です。
多くの例では、顎を動かすことで痛みがでるために、無意識のうちに周囲の筋肉も顎を動かさないようにおさえてしまい、口が開きにくくなります。しかし、関節の内部に動きを制限する組織の変化が起こっている場合があり、きちんと調べる必要があります。
スルメなどの硬くこしのあるものを噛んだときなどに、ズキッとした痛みを感じるときがあります。
この場合、関節の周りの靭帯などの組織が炎症を起こしています。
耳の前に顎関節があり、指で触りながら大きくあけると動くのがわかると思います。
顎関節は上顎と下顎をつなぐ蝶つがいになっていて、その間に関節円板、周りには外側靭帯、関節包があります。
下顎頭と下顎頭窩との間には関節円板がある
顎関節円板の断面は蝶ネクタイのような形をしている
関節円板は骨ではなく繊維(コラーゲン)がぎしっりとまとまったもので、あまりに繊維が密に詰まっているために普通の組織に比べて細胞の数が少なく、また神経や血管はほとんどありません。
靭帯は関節には必ずあって上下の顎が離れてしまうことを防ぎます。
顎関節の靭帯もいくつかありますが外側靭帯が一番重要と考えられています。
関節包は繊維性の膜で滑膜という内張りがあり、滑膜にある滑膜細胞が滑液を分泌し、周囲の組織に栄養をあたえます。
下顎頭が下顎窩からはずれ、前に移動しながら、
回転することによって口を大きく開けることができる
口を閉じたときの下顎頭と関節円坂の位置。
関節円坂は上下の骨のクッションとなっている。
口を大きくあけると下顎頭が関節円板と共に前方に動きます。 左に動かすと右の下顎頭だけが前方に動きます。
関節円板にずれがあると、動きが制限され口が開けにくくなります。
まず、関節の状態を調べる為に専門的な精密検査を受け、的確な診断・治療計画を立てます。
顎関節症の治療法は様々であり、その症状や原因により、治療法を選択します。
顎関節症の原因となる噛み合せを調整するため「スプリント」と呼ばれる装置を作製する場合があります。
夜間のみ装着して頂き、経過を観察します。
この装置を装着している間は、どのように顎を動かしても関節雑音(クリック音)などの違和感を生じない状態を維持することが当初の目的です。
強い痛みがある場合は、お薬で痛みや炎症を抑えたり、筋肉が過度に緊張している場合は筋弛緩薬を使用する場合があります。
また、心因性のストレスなどが強く関与していると判断される場合は、抗うつ薬を使用する場合があります。
痛みのない範囲で、運動療法(開閉口運動練習とストレッチ療法を併用)を行い、スムースな顎運動を獲得できるように訓練します。
各種保存的治療に対し、治療効果のみられない症例には、高分子ヒアルロン酸の顎関節腔内注入療法があります。この療法は関節軟骨に対し保護修復作用が得られます。
顎関節症の治療期間は、顎関節症の状態により決まります。顎関節症は大きく分けると、5つの型に分類できます。
1. 咀嚼筋障害(顎関節症1型)
筋に痛みがある。
2. 関節包・靱帯障害(顎関節症2型)
口を大きく開けた時、および噛みしめた時に関節痛がある。
3. 関節円板障害(顎関節症3型)
関節雑音(カクカクなる)と、口を開けようとする時、閉じようとする時に障害がみられる。
4. 変形性関節症(顎関節症4型)
X線写真において下顎頭に何らかの変形、異常が認められる。
5. 1~4型に該当しないもの(顎関節症5型)
X線写真において下顎頭に何らかの変形、異常が認められる。
1~3型までは当医院にて治療を行ってますが、1・2型は強い症状をとるのに1~2週間。 早い人で2~3日の場合もあります。
3型はズレた関節を元に戻すのを目的とした治療の場合、リハビリの治療のように3~6か月ほどかかるのが一般的です。強い症状をとるだけの治療であれば2~3週で改善します。
顎関節症はゆっくりと悪くなった関節とその周りの筋肉の治療なので、すこし根気のいる治療かもしれませんね。